研究課題
基盤研究(C)
本研究では、温度変動による銅析出物形成と圧力容器脆化の抑制機構及び脆化が抑えられる温度変動最適な範囲を求めることを目的とした。温度変動による損傷組織の回復を研究する前に、圧力容器鋼の一定温度下での損傷組織の発達過程を明らかにする必要である。従って、本研究では、まず、圧力容器鋼の使用温度300℃で二種類の圧力容器鋼のモデル合金Fe-0.3CuとFe-0.6Cuを中性子照射し、損傷組織の照射量依存性を調べた。中性子照射によるCu析出物の形成が三段階に分かれている。まず、中性子照射による原子空孔の移動によりCu析出物の核形成・成長する。それからCuと原子空孔との相互作用があるため、形成されたCu析出物に原子空孔が集まり、マイクロボイドが形成される。形成されたマイクロボイドの表面エネルギーは低いため、Cu原子はマイクロボイドを中心に析出し、Cu析出物が成長する。それと同時にマイクロボイドは小さくなる。密度低い且つ安定なCu析出物が形成された後に、原子空孔がCu析出物に関係ない所で再び集まり、マイクロボイドが形成・成長した。温度変動による損傷組織の回復の研究においては、300℃/450℃と300℃/400℃二種類の温度変動によるモデル合金Fe-0.3CuとFe-0.6Cuの損傷組織の回復を調べた。300℃一定温度照射に比べ、300℃/450℃温度変動照射の方がマイクロボイドのサイズ及び密度が小さくなった。格子間原子集合体も回復した。しかも温度変動照射したほうが300℃で照射した後に450℃で焼鈍より欠陥の回復は早かった。一方、300℃/450℃温度変動照射より300℃/400℃温度変動の方が格子間原子集合体と原子空孔集合体の回復が遅れた。また、300℃/450℃温度変動の方がCuの析出が顕著であった。さらに、モデル合金Fe-0.3Cu、Fe-0.6Cuにおいては300℃/400℃温度変動の低温側と高温側の照射量による損傷組織の回復効果についても調べた。温度変動照射による格子間原子集合体の回復は、300℃予照射の照射量の低い場合が300℃予照射の照射量の高い場合より顕著であった。
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