ICRP60勧告において職業被ばくとしての取扱いが指摘された宇宙活動や航空機利用に伴う線量測定、また世界的に計画・建設が相次いでいる大強度陽子加速器周辺の放射線防護計測、東海村臨界事故後に指摘された緊急時線量評価など、近年重要度が増している「個人中性子線量計測」において、飛跡検出器は最も有望な素子のひとつであると考えられている。本研究の目的は、種々の粒子飛跡の記録特性を明らかにするとともに、高LET粒子の計測手法を確立することにある。 今年度は、20MeV以上の高エネルギー中性子に対するプラスチック飛跡検出器の応答特性の評価と増感用ラジエータの検討を行うこととし、そのために以下の3つのサブテーマを実行した。 (1)イオンレスポンス基礎データの収集 今年度前半、在外研究としてフランスに滞在している研究分担者(山内)が中心となり、海外研究協力者(フランシュコンテ大、ドレスデン工科大)とともにイオン照射実験を行った。また、国内協力機関のひとつである放射線医学総合研究所において、中性子検出効率の評価に不可欠なプロトン基礎データの取得のため、20〜30MeVまでのプロトン照射を行った。 (2)中性子応答の評価 日本原子力研究所との連携研究というの枠組みで高崎研究所TIARAでの実験を2期に分けて実施した。40〜80MeVの準単色高エネルギー中性子に対する応答データ、特に、軽水および重水ラジエータによる増感効果に対する詳細なデータを取得した。 (3)中性子検出効率の理論的評価 核データファイルENDF-B/VIから変換できる角度微分断面積とイオンレスポンスデータを組み合せた検出効率の理論計算手法を確立した。文献値と比較すると、1桁程度の差があることを明かにした。 なお、これらの成果の一部は2003年秋の国際会議において報告した。
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