平成16年度より放射線安全規制検討会で審議が始まった航空機利用に伴う宇宙線被ばく、現在JAEA/KEKで建設中の大強度陽子加速器周辺の放射線防護、東海村臨界事故後に指摘された緊急時線量評価など、「個人中性子線量計測」の重要性が増しており、飛跡検出器は最も有望な素子のひとつであると考えられる。本研究の目的は、種々の粒子飛跡の記録特性を明らかにするとともに、高LET粒子の計測手法を確立することにある。 プロトンなど重荷電粒子に対する基礎データを取得した一昨年度、高エネルギー中性子に対する飛跡検出器の応答特性評価と増感用ラジエータの設計に続いて、今年度は、設計したラジエータの増感効果の実験的検証と実用化のためのエッチピット計測手法の整備を行った。 (1)二層ラジエータの増感効果の実験的検証 速中性子用ラジエータとしてはポリエチレンが一般的であるが、本研究で対象としている数10MeV程度の高エネルギーに対しては十分な感度が得られないことから、重水素化物質とポリエチレンから成る二層構造ラジエータを設計した。この効果を確認するために、日本原子力研究開発機構高崎サイトのTIARAでの実験を実施した。60MeVと75MeVの準単色高エネルギー中性子に対するデータを収集した。軽水および重水の単体ラジエータに対し、二層構造ラジエータの増感効果が高いことを実験的に確認した。また、理論的考察から、二層の厚さを変えることによって、エネルギー依存性をある程度制御できることを示した。 (2)エッチピット計測システムの整備 臨界事故のような緊急時大量被ばくがあった場合の高密度のエッチピット計測が、また通常の線量評価においても実用化・ルーチン化のためには多数の試料の計測が必要となる。そこで、本年度はラインセンサを用いた高速画像取得機能を付加させたエッチピット自動計測システムを整備した。
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