研究概要 |
固体酸化物形燃料電池は,セラミックを高温で使用しているため,熱ストレスに対して脆弱で,温度変動がセルの剥離や亀裂などの破損の原因となるという欠点がある.従って,セルに急激な温度変動が加わる起動・停止の回数を必要最小限に抑える必要があるのはもちろん,運転中もできるだけセル内の温度分布を一定に保つ必要がある.このような運転は,一定出力でベースロード運転とすれば容易に実現可能であり,従来想定されていた大規模集中電源であればそのような運転でも問題ない.しかし,小型分散電源の場合,電力負荷追従運転を行う必要があるので,ある程度の負荷の動揺は避けられないと予想される.この場合,負荷が変化すると,セル内の熱バランスが変化するので,セル内の温度分布も変化することになる.従って,固体酸化物形燃料電池を小型分散電源に適用するためには,負荷が時間的に動揺した場合のセル内温度分布の変動を数値シミュレーションにより詳細に検討しておく必要があると考えられる.そこで,今年度は,平板型固体酸化物燃料電池の単セル板を解析対象として,その電気的・熱的特性の数値解析コードを駆使した数値シミュレーションにより,導入する燃料ガスと空気の流量は一定のままで,負荷電流に振幅が同一で周期の異なる正弦波の変動を与えた場合のセル内温度変動に関する検討を行った.その結果,周期が数分オーダーよりも長い緩やかな負荷動揺に対しては,セル温度を一定に保つための何らかの温度制御が必要であるが,それよりも周期の短い速い負荷の動揺に対しては,温度変動が小さくなるので,温度制御の必要はないことを明らかにすることができた.
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