研究概要 |
合成時間700℃で10分、30分、60分保持した15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5系ガラスの含水率はそれぞれ、6.1,4.2,3.7wt%の含水率であった。また、15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5-10WO_3系ガラスの含水率はそれぞれ4.3,2.7,1.6%であった。この2つの系での電導度は、先の含水率のデータが示すように電導度も15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5系ガラスでは10^<-3>S/cmオーダーの高いものであった。しかし、その試料は試料内に多くの水分を含有しているため、200℃→150℃→100℃→150℃→200℃と温度を変化させて、測定を行うと経時変化が確認された。これは測定中の加湿雰囲気による状態変化やオルトPO_4基の溶出によるものではないかと考えられる。そこで、経年変化のない試料を合成するため15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5系ガラスにタングステン酸を添加した15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5-10WO_3系ガラスを用いて電導度測定を行った。その結果この試料の電導度は10^<-4>S/cmオーダーであるが、温度変化に伴う、電導度変化を示さないガラスであった。しかも測定後の状態も変化がなかった。熱安定性の評価のための^<31>P固体MASNMRによる測定結果では、通常、リン酸塩にはQ0,Q1,Q2ピークが観測されるが本研究で創製したガラスも3種類のピークが観測された。15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5系ガラスではQ0ピークの成分比が非常に多く、その結果高い電導度とオルトリン酸基による不安定性の原因になっていることがわかった。それと比較して15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5-10WO_3系ガラスはQ1,Q2ピークの成分比が多く、電導度は比較的低くなるが、安定性に寄与することがわかった。従って、WO_3を添加することによりある程度Q0ピーク量をコントロールすることができ、電導度と化学安定性を両立させることができるのと考えることができる。また、発電性能試験により、15BaO-10PbO-5SrO-70P_2O_5-10WO_3系ガラスは2.4mW/cm^2の発電性能があった。
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