(1)突然変異系統の遺伝学および形態学的解析:アサガオの獅子(FEATHERED ; FE)遺伝子の突然変異体は葉は裏側を表にしたように抱え、花冠は裂けて強い変異体では先端が折り返したチューブ状の花弁となる。形態学的にその原因を探るため、葉の表皮組織を観察したところ、野生型では気孔は主に葉の裏側(背軸側)に分布しているのに対して、獅子変異体では裏側の気孔数が減少しており、他の組織も含めて裏(背軸)側が表(向軸)側化していることが明らかになった。花弁についても表現型から同様の傾向が見られると予想している。他にも立田(MAPLE)遺伝子のクローニングに向けて、交配によってバックグラウンドを置換した系統の作製や、マルバアサガオの八重咲き変異体(fp)の解析に向けての交配・分離実験を行った。 (2)トランスポゾンタギング系を利用した原因遺伝子のクローニング:獅子変異体は比較的安定であるが、体細胞突然変異を起こし、途中から野生型に復帰した株を見いだした。アサガオの変異体のほとんどに挿入していると予想されるトランスポゾンTpn1ファミリーの末端配列を利用し、AFLP法を改変したSTD法によって獅子突然変異体と復帰した野生型のTpnコピーの差がある部分を検出し、獅子遺伝子のクローニングに成功した。獅子遺伝子は、シロイヌナズナのKAN1遺伝子ともっとも高い相同性を持っており、KAN1と同様に側生器官の裏側で発現し、背軸側の特徴を決定していると予想される。獅子変異体での転写量の増加や、長い転写産物は獅子変異体が優性であることの原因かもしれない。ゲノム構造の解析や交配実験から強い表現型を示す系統は獅子変異に加えて別の突然変異による多重変異体である証拠が得られた。今後より詳細にこの獅子遺伝子の機能について解析を行っていきたい。
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