前年度、向背軸形成に関わる、アサガオの獅子(FEATHERD ; FE)遺伝子の単離に成功し、より詳細な解析を行った。現在維持されている強いfe系統を野生型と交配して分離実験を行ったところ、弱いものから元の系統同様に強い変異体、またその中間型が分離した。この分離比から、葉と花に関わる主要な修飾変異がそれぞれ1つ存在すると推定した。また、他の実験動物で明らかになっている向背軸の形成に関与する遺伝子のfe変異体における転写量を解析したところ、CRC(CRABS CROW)転写量が顕著に減少しているため、修飾変異の1つがこのCRCに対応する可能性があると考えて、引き続き解析を行っている。 pt(petaloid;八重咲)変異体は、雄しべが花弁に転換する変異体であり江戸時代後期から知られているが、原因遺伝子はもとより、連鎖地図上の位置も明らかになっていなかった。Pt変異体と、強い生殖器官の花被への変換を示すdp(duplicated;牡丹)変異体と交配実験を行った結果、ptはよわいDP遺伝子の対立遺伝子であることが明らかになり、突然変異遺伝子の構造を解析した結果、完全な形のTpn109トランスポソンがDP遺伝子の第2イントロンに挿入しており、これが離脱する際にまわりのゲノムを欠失させることで、強いdp変異体になっていることが明らかになった。 また鈴木らによって単離されたブラシノステロイドの生合成に関わる、渦小人変異体の原因遺伝子kbt(PnDET2)について、s(star;桔梗渦)系統の塩基置換を解析した結果、解析した全系統に同一の突然変異が見られた。つまり渦小人とは、ct(contracted;渦)とsの2重変異体であり、ct遺伝子もブラシノステロイドの生合成に関わっていることが示された。
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