研究課題/領域番号 |
15570009
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
秋元 信一 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (30175161)
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研究分担者 |
長谷川 英祐 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (40301874)
八尾 泉 北海道大学, 大学院・理学研究科, COE研究員 (70374204)
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キーワード | 共生 / 相利 / 進化 / 競争 / 多様性 / アリ / アブラムシ / クローン |
研究概要 |
アブラムシのいくつかの種はアリと共生関係にあり、またそのコロニーは複数のクローンから成る。アリ随伴性のヨモギヒゲナガアブラムシを用いて1つのコロニーの中で複数のアブラムシクローンはどのような関係にあるのか、また、アリの随伴によってその関係はどのように変化するのかについて温室内のコントロールされた条件下で調査を行った。ヨモギヒゲナガアブラムシはクローンが色彩で区別できるので、クローン間の相互関係を定量化できる。アブラムシを単一クローンで飼育する単一区と、2つのクローンを共存させて飼育する共存区をつくり、それぞれのアブラムシ個体数の推移を観察した。一方、単一区と共存区のそれぞれにアリを随伴させて、アブラムシ個体数の推移を観察し、全てのアブラムシクローンに対して初期増殖率と最大個体数を測定した。アリの随伴がない場合、共存区においてクローン間で初期増殖率と最大個体数に有意な差がみられた。また共存区において初期増殖率と最大個体数が高くなったクローンと低くなったクローンをそれぞれ単一区で飼育した場合には初期増殖率と最大個体数に有意な差が見られなかった。アリの随伴実験によって、共存区において個体数の差が消滅し、単一区と共存区の両方で個体数が激減するという結果が得られた。アリの訪問によってアブラムシは産子数を低下させ、それに使われていた栄養を、アリを呼び寄せるために甘露に投資したと考えられる。アブラムシあたり訪問するアリの数はアブラムシの個体数に大きな差が見られないにも関わらず、単一区よりも共存区で多くなった。このことは異なるクローンのアブラムシが集まってコロニーを形成したほうが、クローン単独でコロニーを形成するよりも有利であることを示唆している。したがって、アブラムシコロニーの中では複数のクローンが潜在的には競合しあっているものの、アリの随伴によってこの競合関係は消滅すると推測できる。
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