研究概要 |
植物体内での資源分配様式と萌芽再生能力の関係、および萌芽再生に際して資源の再配分がどのように行われるかを明らかにするために、鳥取大学農学部付属溝口演習林において、コナラおよびミズナラの同齢稚樹集団を対象に、伐採、採集、コントロール処理を行った。伐採、採集個体については植物体の各器官について幹重測定等を行った。非構造性炭水化物を定量するための実験器具類、設備を整えた。 環境条件の違いが樹木の実生の資源分配様式にどのように影響し、またそれと関連して損傷を受けた際の萌芽再生能力にどのような違いが生じるかを明らかにするために、ミズナラの実生を用いて実験を行った(Kabeya, Sakai, Matsui and Sakai,2003,Journal of Plant Research 116:207-216)。林冠の疎開した明るい環境下では、閉鎖林冠下の暗い環境に比べて、根への資源分配率が高く、非構造性炭水化物濃度も高かった。また貯蔵炭水化物濃度は明るい環境では樹齢とともに増加するが、暗い環境では逆に減少した。さまざまな光条件、樹齢の個体を地際で刈り取り、萌芽再生率ならびにその後の生存率を調べたところ、それらの違いは根の貯蔵資源量(非構造性炭水化物含有量)で説明でき、貯蔵資源量が多いほど損傷への耐生が強いことが明らかとなった。ミズナラでは、生産力の高い環境では、とりわけ生育初期において、資源を他個体との競争のために光合成器官や上伸成長のために優先的に用いるのではなく、損傷を受けた場合に備えてかなりの割合を根に貯蔵する戦略をとっていると考えられた。
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