植物体内での資源分配様式と萌芽再生能力の関係、および萌芽再生に際して資源の再配分がどのように行われるかを明らかにするために、鳥取大学付属演習林において、コナラおよびミズナラの同齢稚樹集団を対象に、伐採、採集、コントロール処理を行った。伐採、採集個体については植物体の各器官について幹重測定等を行った。 環境条件の違いが樹木の実生の資源分配様式にどのように影響し、またそれと関連して損傷を受けた際の萌芽再生能力にどのような違いが生じるかを明らかにするために、ミズナラの実生を用いて実験を行った。林冠の疎開した明るい環境下では、閉鎖林冠下の暗い環境に比べて、根への資源分配率が高く、非構造性炭水化物濃度も高かった。また貯蔵炭水化物濃度は明るい環境では樹齢とともに増加するが、暗い環境では逆に減少した。さまざまな光条件、樹齢の個体を地際で刈り取り、萌芽再生率ならびにその後の生存率を調べたところ、それらの違いは根の貯蔵資源量(非構造性炭水化物含有量)で説明でき、貯蔵資源量が多いほど損傷への耐性が強いことが明らかとなった。 コナラの実生を材料に、萌芽再生のためにどの程度の資源貯蔵を行っているのか、また損傷の時期(季節)に応じて資源再分配パターンをどのように調整しているのかを明らかにするために、時期をずらした刈り取り処理を行い、シュート再生と資源動態を追跡調査した。実験に用いた3年生のコナラ実生では、非構造性炭水化物が根の20-50%を占め、損傷を受けた際にこれを消費して消費分に応じた再生シュートを形成することや、季節が遅くなると再生に再分配する資源の割合が低下することが定量的に示された。
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