研究課題
植物プランクトン共存機構の理論的検討の深化を図った。特に、「富栄養化のパラドックス」に中心をおいて検討した。このパラドックスは、水界の栄養塩量(富栄養度)が増加するに従って植物プランクトンの多様性が減少することをいう。栄養塩量が増加すれば、いろいろな種の栄養要求を満たすことが可能であると思われるのに、実際の野外観測では、種の多様性が減少する。したがって、パラドックスと考えられている。また、湖沼の植物プランクトンの多様性は、極度の貧栄養状態では、減少する。このように、栄養度に従って、植物プランクトンの多様性が変化する機構を解明することは、他の生物の共存機構を解明する基礎的考え方を提供する。さらに、水資源の保全・改善を行うための基礎となる。格子モデルを用いて、成長定数の近いプランクトン10種を想定し、局所的および大域的な相互作用をする場合について検討した。一般的には、水界植物プランクトンでは大域的な相互作用を想定することが多いが、水の粘性を考慮すると、植物プランクトンが大域的な行動をとることは少ないこともありうるし、むしろ、局所的相互作用のほうが自然であると想定した。計算の結果では、局所的な相互作用を想定したほうが、「富栄養化のパラドックス」をうまく再現できた。大域的な相互作用のもとでもこのパラドックスを説明できたが、局所的な場合ほどではなかった。この結果は、植物プランクトンは、水の中で、パッチ状になることが多いと考えられる。植物プランクトンの生育など実験では、均一な水環境をつくって挙動を調べることが多いが、再考する必要があることがわかった。本研究の実験に関することでは、植物プランクトンの連続培養競争では、断続的栄養供給と連続的栄養供給の場合、優占種が変わることを、見つけた。現場観測では、昨年に引き続き銚子市周辺の河川、調整池を対象に、植物プランクトンの種構成を調査し、多様性についての基礎データを収集した。
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