研究概要 |
いくつかの魚類において,体が右か左に曲がる二型があることが報告され,これが分断非対称性の例とみなされ始めている.この左右二型は遺伝子,各種における右利きの頻度は0.5を中心に周期変動し,右利きの捕食者はおもに左利きの被食者を食べ,左利きの捕食者は右利きの被食者を食べる(交差捕食)ことが報告されている.われわれはこの交差捕食が左右二型の維持に有効な頻度依存淘汰をもたらす(右利きの捕食者が少数派になったとき,左利きの捕食者は被食圧が低く頻度が増え,結果的に右利きの捕食者が有利になる)と考え,捕食者と被食者の左右性を同寺院考えた数理モデルを解析した.その結果,被食者と捕食者の2種からなる左右二型の頻度変化は,たいへんゆっくりとではあるが,左右半々の定常点に漸近する.しかし,3栄養段階系を考え,最上位捕食者が中位も下位も捕食する雑食者の場合,3者は永久に振動し続けるリミットサイクルが現れることを数理モデルの安定性解析,存続可能性解析により見出した. それに対して,右利きの捕食者が右利きの被食者をより多く食べる(平行捕食の)雑食者がいる3種系の数理モデルでは,左右二型は維持されず,どちらか一方のみが存続するか,3栄養段階のうち中位もしくは上位捕食者が絶滅することが理論的に示された. 本研究の成果をAmericanNaturalist誌に投稿し,先日受理通知が届いた.
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