研究概要 |
多くの魚類に右利きと左利きの遺伝的2形があり、捕食者が自分とは利きの違うほうの被食者を食べることによって維持されることを室内実験、野外標本の胃内容物調査、および数理モデルにより検証した。数理モデルによる検証により、雑食性(ギルド内捕食、最上位捕食者が中位捕食者だけでなく、最下位の餌生物も直接捕食すること)がある場合には右利きと左利きが共存しつつも、頻度が必ず振動することを明らかにした。これにより、異なる利きの被食者を食べることが新たな概念として学界で認められた(Nakajima, Matsuda, Hori 2004:American Naturalist)。ただし、名称は反対称捕食ではなく、cross predation(交差捕食と訳出)として認められた。すなわち、「捕食関係を通じた頻度依存淘汰という新しい分断性非対称の維持機構を新たな概念として定式化する」という「本研究の第一の目的」、ならびに「雑食が左右二型の頻度の安定性にどう寄与するかを明らかにする」という第2の目的を果たした。 さらに、遺伝的浮動のある集団遺伝モデルによる解析も行った(Nakajima, Masuda, Hori 印刷中)。また、室内実験ならびに胃内容物調査から、魚食性の魚の場合には交差捕食が100%ではなく、並行捕食(捕食者と被食者の危機が同じもの)が1/4程度含まれる例も明らかになった。さらに、利きの程度を定量化する試みもブラックバスなどを用いて進めており、左右性の進化に関わるモデル作りを継続して進めている。
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