研究概要 |
地域の生物相の種の生態特性から野外の生物群集を予測できれば,外来生物の導入前リスク評価や地球温暖化に伴う生物群集の変化の予測が可能になる.種の生態特性からデータマイニングによって予測する,群集の組み立て規則(assembly rule)の研究がすすめば,これが可能になるのであるが,世界の研究者の間では必ずしも広く認知されていない.研究代表者もこの分野を1990年代前半に立ち上げたひとりであるが,世界的にこの分野の研究を活性化してゆく必要がある. この研究の目的は統計的なアプローチの開発と検証,および複数の気候帯の群集における組み立て規則の確立と予測可能性の評価である. その結果,種のプールの設定と侵入のターゲットの設定については,既存の有害外来植物リスク・アセスメント(Weed Risk Assessment)の検討の結果,侵入ターゲットを広域ではなく個々の群集に設定する必要のあることが確認された.また植物群集はただひとつのニッチからなっており,このため単純なロジスティック回帰を適用することができることが明らかになった.植物の種特性を暖温帯下部と冷温帯上部で測定し,既存の暖温帯上部のデータとあわせて,組み立て規則をもとめた.その結果,フロラの異なる様々な気候帯で,群集タイプ(極相林,植林地,刈り取り草地,耕地雑草群集)ごとに大まかにはほぼ同じ組み立て規則が適用できることが明らかになった. 今後,この研究結果が外来種のリスク評価や地球温暖化後の植物群集予測などに応用されてゆくには,植物の生態特性のデータベースの公開が不可欠となる,研究代表者が立ち上げた「Plant trait database in east and south-east Asia(東アジア・東南アジア植物種特性データベース)」に,今回の研究プロジェクトで測定したデータを登録して公開した.
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