本研究で対象としている生活史の異なる林床植物4種(エンレイソウ、オオバナノエンレイソウ、オオウバユリ、オクエゾサイシン)に関して、これまで個体にマーキング処理を施してある永久調査区において、個体の成長、生存、死亡に関わる継続追跡調査を行った。また、結実期には各種について種子結実調査を行い、個体群の繁殖率に関する情報を収集した。このほか、オオバナノエンレイソウに関しては、さまざまな大きさの孤立林が点在する北海道十勝地方において、林縁から林内にかけて光強度ならびた土壌含水率の測定を行い、物理的環境の変化がオオバナノエンレイソウ個体群に及ぼす影響について評価を試みた。 また、生活史パラメーターの変動が個体群の増加率に与える影響を評価する個体群増加率の感度(Sensiitivity)や弾力性(Elasticity)を密度依存的推移行列モデルで評価する方法について検討を加え、その成果について外国雑誌に二本の論文が掲載された(裏面の「研究発表」の項参照)。さらに、集団の絶滅確率を求めるシミュレーションプログラムに用いるために、既存のセンサスデータの統計学的解析を行った。その結果、繁殖率と死亡率の間の各種における相関、および各種の種子繁殖依存率と栄養繁殖依存率が求められた。さらに、これらの成果と求められた理論式を用いて、各種の100年後の絶滅確率を求めるシミュレーションプログラムを作成した。平成16年度に新たに収集されたセンサスデータを元に統計学的解析を行い、上記のシミュレーションプログラムを改良し、各種における絶滅確率の計算を行った。現在これらの成果をまとめて投稿論文を執筆中である。
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