越塚が開発した粒子法により流体の運動を正確に計算する手法を用いて、生物の遊泳運動について数値的に研究した。カンブリア紀中期に生息したアノマロカリスは世界中から発見し、当時の海洋での代表的な生物であり、また最も大きな生物であった。このアノマロカリスの遊泳の方法及び形の進化について研究した。まずアノマロカリスの形を化石から模式的に特徴を抽出し、そのヒレを14対の板として表現する。計算は2次元で行っている為、これらは離散的な14コの直線からなっている。これら14個の直線(アノマロカリスのヒレ)を様々な組み合わせた結果、波打たせるような様式が最もエネルギー対速度比が高かった。 また、アノマロカリスの形の進化を調べる為、離散的な直線の長さを短いものから長いものへと段階的に変化させて速度のエネルギーに対する比を計算してみた。その結果、ヒレの長さが長くなるに従いほぼ比例的に速度が増加し、速度対エネルギーの比は一定であるが、直線の長さが全体を連続的につなげるようになった瞬間に速度が飛躍的に上昇し、またエネルギーに対しての速度比が上昇することがわかった。化石に残されたアノマロカリスの特徴は、発達したヒレにあり、これらは重なった形になっていることにある。我々の計算結果は、化石に残されたアノマロカリスのこのような形が形態の変化による運動効率の最適化の末に起こった収斂進化の結果であることを示すものであることを明らかにした。
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