研究課題
本研究では、湖沼沿岸域が生態系機能として有する脱窒機能に対し、水生植物群落が与える影響(促進効果など)を定量的に評価することを目的としている。野外における脱窒の実測方法について昨年度より検討を続け、今年度は確立に至った測定条件に基づいて脱窒量の季節変化および制限要因に関する検討を行った。霞ヶ浦・木原の実験池に分布するガマ群落に、内径320mm、全高1,180mmのアクリル製チャンバーを設置し、アセチレン阻害法を用いて脱窒活性を評価した。アセチレンガスはチャンバー内における地上部(液相+気相)体積の10%相当を添加した。また、脱窒菌の基質として、チャンバー内の硝酸態窒素(NO_3-N)初期濃度が約1.0mg L^<-1>となるように硝酸ナトリウムを用いて調整した。チャンバー内には各種センサーを設置し、実験中の水質変化をモニタリングした。この実験系を植生区および裸地区に各4機ずつ設置し、水生植物群落内における脱窒活性を亜酸化二窒素(N_2O)生成量として季節ごとに24時間もしくは48時間の集中観測により評価した。N_2O生成量を比較すると、植生区では裸地区よりも明瞭に多く、5月の測定では約3.5倍の差異(35.0:10.7μLL^<-1>day^<-1>)を示した。そこで、植生区における季節間差を比較したところ、4月(10.7μLL^<-1>day^<-1>)から7月(96.5μLL^<-1>day^<-1>)にかけて増加傾向を示した。NO_3-Nの減少量に対するN_2O生成量を算出すると、7月で極大値の29.4%を示し、夏季において脱窒が水質浄化に大きく貢献していることが示唆された。また、脱窒量と環境要因との関係を考察したところ、水中のEhとの間に高い正の相関(r=0.8)が認められ、酸化還元状態と密接な関係にあることが推定された。
すべて 2004
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