研究概要 |
本研究ではシロイヌナズナを用いて,小胞体hsp70システムが植物の発生・分化のどの過程をどのように制御しているのかを明らかにすることを目的としている.本年度は,小胞体hsp70 (BiP)にさまざまな優性欠損変異を導入し,これをシロイヌナズナ培養細胞とシロイヌナズナ植物体で発現する系の作製を行なった.BiP優性変異体と小胞体局在型GFPのシロイヌナズナ培養細胞で共発現を行なったところ,タンパク質の小胞体膜透過の欠損,小胞体局在型GFPの小胞体内局在異常を示唆する結果が得られた.シロイヌナズナ植物体を用いた解析では,LAT52プロモーターを用いて,ターゲットを花粉細胞とする組織特異的なBiP優性変異体の発現用プラスミドの作製を行ない,これをシロイヌナズナに導入している.また,LAP1,AGP1プロモーターもまた,花粉特異的なBiP優性変異体の発現系に利用可能であることを示した. シロイヌナズナに存在する3つのBiP遺伝子に関するT-DNA挿入欠損変異体のスクリーニングを行ない,BiP2とBiP3に関しては挿入変異体を取得した.これに加えて,RNA干渉によるBiP遺伝子ノックダウン用のプラスミドの作製とその植物体への導入を行なっている. シロイヌナズナゲノム上に存在する,89のDnaJホモログの遺伝子のうち,酵母でBiPのパートナーとして機能する小胞体DnaJホモログ,Jem1p,Sec63p,Scj1pに対応するものはそれぞれ,1個,2個,2個存在することが予想される.これらとGFPとの融合タンパク質をシロイヌナズナ培養細胞で発現したところ,Jem1pとSec63pのホモログとの融合タンパク質は小胞体に局在することが示された.また,Scj1pホモログの一つを酵母jem1scj1 2重変異株中で発現すると,変異株の温度感受性を抑圧することが示された.
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