研究概要 |
シロイヌナズナ花茎の重力屈性変異体として得た変異体のうちzig-lは形態にも異常を示す。この原因遺伝子が、液胞への小胞輸送を担うSNAREであった事に端を発し,小胞輸送系が支える液胞形成や機能が、どのように重力屈性や形態形成に関与しているのかを、より具体的に理解することを目的にとして、今年度は次の2点について解析を行った。 1.重力感受の平衡石として働くアミロプラストの動態と液胞との関係を理解するために、生きた花茎の内皮細胞を用いて詳細な観察を行った。野生型内皮細胞の液胞膜は激しい動態を示し、原形質糸の形成・消失が頻繁に起こっていた。アミロプラストはその周囲を液胞膜で取り囲まれており、原形質糸を通って細胞内を移動していた。これに対し、zig-lでは原形質糸が観察されず、アミロプラストは液胞膜に取り囲まれてもいなかった。野生型のアミロプラストは、重力刺激前でも跳ねるような活発な動きをしていた。重力刺激直後には、一部のアミロプラストが新たな重力方向に向かって顕著な速度で移動するものの、その後はやはり重力方向とは関係のない動きが目立った。この'ノイズ'ともとれるアミロプラストの動きは、アクチン重合阻害剤の添加により消失したが、重力刺激直後の一部の早い動きは未処理時と同様に観察され、また同条件での花茎重力屈性反応はほぼ正常であった。これらの観察結果は、これまでの固定された感受細胞の観察からでは決して得られないものであり、重力感受におけるアミロプラストの役割についての認識を一新させるものであった。 2.zig-lの表現型を抑圧する新たなサプレッサー変異体を単離し解析を行ったところ、その原因遺伝子は予想通りZIG/AtVTI11が関係するポストゴルジ輸送経路の分子ネットワークの一員であった。今後詳細な解析を行う。
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