1.これまでの光架橋反応実験から、光化学系IIの酸素発生系は反応中心結合タンパク質D1とアンテナクロロフィル結合タンパク質CP43、膜表在性のPsbOおよびMn原子で構成されていることが分かってきた。酸素発生系のMnが酸素発生部位のコンフォメーションの維持にどのような役割を果たすのかについて、光によるタンパク質架橋反応を指標に調べた。その結果、Mnが4原子光化学系IIに結合したコントロールでは酸素発生活性は維持されているがMnが完全に遊離すると酸素発生活性が無くなることと、その時、Mnが4原子あるとD1とCP43の架橋が起きず、Mnが完全に無くなるとD1とCP43の架橋が起こることが分かった。次にMnを順次再構成して光化学系IIに結合させる実験を行なうと、Mnが1原子結合することでD1の架橋はほぼ100%抑制された。この時、酸素発生活性は完全には回復していないが、Mnからの電子伝達は可能なので、恐らくMnはTyrZ^+やP680^+に電子を与えることでタンパク質架橋の原因を除去していることが考えられる。 2.PsbOは光化学系IIのチラコイドルーメン側に結合した膜表在性たんぱく質であるが、一部はルーメン中にも存在し、構造的に極めて安定なタンパク質であることが知られている。 本研究ではPsbOが光ストレス下で光化学系IIから遊離した後、光化学系IIで生じたヒドロキシルラジカルで損傷を受けることを初めて示した。損傷を受けたPsbOは再び光化学系IIに結合することは出来なかった。
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