1.光化学系I反応中心タンパク質のエーテル処理によりChlを徐々に抽出すると、Chl a/P700比に比べてChl a/Chl a'比は常に小さいことが明らかになった。このことから、P700の失活は、P700を構成するChl a dimer構造が壊れ、次いでP700を構成するクロロフィルが抽出される、という二段階で起こることが明らかとなった。全Chlの98%を抽出した標品を用いて、脂質と共にChl aを添加するとP700が再構成され、その量が約2倍に増えることがわかった。 2.Chl a/P700=10の標品を陰イオン性界面活性剤で処理すると、P700は失活するがChl a'の量は変化しなかった。P700の酸化条件下で同様な処理を行うと、P700の失活に伴って、P700を構成する2個のChl分子(Chl aとChl a')のうち、Chl aのみが酸化変性することが明らかになった。この結果から、(1)P700が酸化されるとChl aに+電荷が局在すること、(2)このChl a^+は酸化変性され易いこと、(3)この処理によりP700のdimer構造が壊れることがその失活の原因になっていることが明らかになった。 3.クロレラを高濃度亜鉛培地・暗所で生育させると、MgがZnに置換されたChlが形成され、全クロロフィルの約20%に達することが明らかになった。このZn-Chlは光合成膜に組み込まれており、吸収した光エネルギーを効率よく光合成反応中心に伝達することがわかった。 4.光化学系Iの電子受容体として働くフィロキノンを欠損したシロイズナズナ変異体ではP700が形成されておらず、光化学系I活性はないが、光化学系Iの長波長アンテナChlは存在していることが明らかになり、反応中心部のみが欠損した標品が得られることがわかった。
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