イネの種子形成機構の全体像を分子レベルで把握するため、種子形成期に発現する遺伝子を網羅的に解析した。アンチセンスSPK形質転換体は胚乳形成に異常を起こし、水モミを生じるので、この組換え体を利用して登熟初期に働く遺伝子を調べた。マイクロアレイ実験により、125種の遺伝子の発現に変動が認められ、そのうち顕著な変動を示す遺伝子についてRT-PCRによる発現量の確認と、これらの遺伝子に対するアンチセンス形質転換体の作成を試みた。一方、穂の形態形成異常を示す変異体を利用したマイクロアレイ解析およびディファイレンシャル・ディスプレイー解析を行い、多数の遺伝子発現の変動を見いだした。SUMO1遺伝子はこの変異体で発現量の変動が認められたため、このアンチセンス形質転換体を作成し、表現型を調べた。その結果、SUMOの発現抑制をした形質転換体では穎の消失などの穂の形態異常が認められた。このことから正常な穂の形態形成にSUMOが重要な役割を果たしていることが強く示唆された。この他に、CEN-P類似タンパク質、F-boxタンパク質、GASRタンパク質での発現量の変動が認められた。GASR遺伝子の発現について詳細に調べたところ、この遺伝子は幼穂形成の成長点付近での強い発現が観察された。
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