研究概要 |
近年、硬骨魚類や円脚動物の内分泌系の解析が急速に進展しているが、内分泌系の起源に重要な手がかりを与える原始魚類での知見はきわのて乏しい。本研究では、メクラウナギの腺下垂体ホルモンについて、産生細胞を同定するとともに、それらのホルモン遺伝子を同定することを目的としている。1)新潟県岩船漁港に水揚げされたクロメクラウナギ2,000尾を入手し、それらの下垂体と脳を採取した。現在、それらの一部を用いて遺伝子ライブラリーを作成中である。2)メクラウナギの腺下垂体が生殖腺刺激ホルモン(GTH)を分泌している確かな証拠はないが、免疫組織化学的にGTH陽性細胞が観察される。そこで、クロメクラウナギを材料に、腺下垂体と生殖腺の機能連関を調べた。その結果、生殖腺の発達した成体では、多数の細胞がGTH陽性反応を示したのに対して、生殖腺の未熟な個体ではGTH陽性反応も弱いことから、メクラウナギ腺下垂体がGTHを分泌している可能性が示唆された。3)メクラウナギの腺下垂体の細胞構築を知るため、免疫組織化学とレクチン組織化学を行った。その結果、クロメクラウナギの腺下垂体は、GTH陽性で一部のレクチン陽性細胞、GTH陰性で多くのレクチン陽性細胞、GTHもレクチンも陰性な細胞の3種類からなることが明らかになった。ヤツメウナギを含む多くの脊椎動物のプロオピオメラノコルチン(POMC)は糖蛋白質であることから、GTH陰性でレクチン陽性細胞は、POMC族の細胞の可能性が高いこと、一方、GTHもレクチンも陰性の細胞は成長ホルモン族の細胞である可能性が高いことなどから、メクラウナギの腺下垂体も、ヤツメウナギと同様、GTH族、POMC族、成長ホルモン族の3種類の細胞よりなることが示唆された。
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