1)ER body形態異常株の解析 ER bodyの形態に異常を持つ3系統について、形態学的な解析をおこなった。この3系統は、ER bodyの数が少ない事から、正常なER bodyの形成が阻害されていると考えられる。A2系統では、GFPなどの物質が小胞体内腔に異常に蓄積し、細胞内部に膨潤した小胞体の固まりが形成されていた。A28系統にも細胞内にGFPの蛍光を発する凝集体が形成されていたが、電子顕微鏡観察の結果、この凝集体はA2系統のものとは異なり、通常な細胞では見られない小胞状の構造体が細胞内に凝集していることが明らかとなった。B23系統では、凝集体は形成されないがA28系統と同じく、小胞体から形成される小胞状の構造体にGFPが蓄積していた。以上の結果から、ER body形成が阻害され小胞体からの物質運搬ができなくなると、A2系統のように運搬されるべき物質は小胞体内腔に多量に蓄積するが、植物細胞には物質運搬に関わる柔軟なメカニズムが存在し、A28やB23系統のように、ER bodyとは別の構造体を小胞体から形成して物質を運搬する能力を有している可能性が示唆された。 2)シンタキシン変異株の解析 シンタキシン変異株には、DC(ER bodyと類似の構造体)に蓄積するとされているミロシナーゼが多量に蓄積する。そこで、この変異株のミロシナーゼ蓄積部位を解析した。変異株ではミロシナーゼを蓄積する細胞(ミロシン細胞)の数が増加していた。ミロシン細胞の液胞内にはミロシナーゼが多量に蓄積しており、液胞へのミロシナーゼ運搬にはER body様の構造体が関わっていることが明らかとなった。この結果、ER bodyは多量に物質を運搬する細胞に出現する構造体であり、DCと同じ構造体である可能性が示された。 3)その他 プロラミン過剰発現株の解析と老化に伴うER bodyの挙動解析もおこなった。
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