(1)ER body形態異常株の解析 本年度は、ER body形態変異株A28に着目し解析を進めた。この変異体は、ER bodyの形成が阻害されていると考えられるので、ER body形成のメカニズムを探るためにA28の原因遺伝子の同定を試みた。昨年度の粗マッピングの結果、3番染色体に原因遺伝子がある可能性が高かったので、ランズバーグとバッククロスしたF2世代について、3番染色体上の既存のマーカーを用いてマッピングを行なった。その結果、マーカーYUP4G12RE付近がもっとも怪しいと思われたので、BACF13E7の情報を基にYUP4G12RE付近と思われる3つの遺伝子解析を行なったが、塩基配列に変異は認められなかった。そこで、さらに変異箇所候補領域を狭めるために、3番染色体上のマーカー17D8LEとNGA172の間に存在するマーカーを用いて変異候補領域を探ったところ、BACF13E7ではなく、BACT17B22上に変異箇所が存在する可能性が高くなった。現在、BACT17B22上の遺伝子のうち、小胞体からの輸送に関わると思われる遺伝子について変異箇所が存在するかどうかをシークエンス解析により行なっている。 (2)子葉細胞内オルガネラの挙動解析 光照射条件と暗所生育条件における子葉細胞内オルガネラの挙動の違いを解析した。試料には、1日目、3日目、5日目を用いた。暗所生育細胞内では、リピッドボディの消失が遅く、明所生育子葉の方が、早くリピッドボディが消失していることを確認した。また、リピッドボディを取り囲む小胞体の有無を確認したが、現在までのところ、再確認はできなかった。明所生育3日目の子葉細胞内において、発達したTGN(trans Golgi network))を持つ多数のゴルジ体が見られる組織が存在し、暗所生育3日目においては、MVB(multi vesicular body)を多く有する組織が存在することを明らかにした。 (3)その他 高圧凍結および凍結置換法についての論文(ミニレビュー)を日本作物学会紀事に投稿し、採択後掲載された。「植物の細胞を観る実験プロトコール」の免疫電子顕微鏡法を担当執筆した。
|