エヒドラからDD-RT-PCR法によって単離した足部に特異的に発現する遺伝子ankletは、通常のヒドラにおける発現パターンと足部再生時における発現パターンから、足盤細胞の分化初期において何らかの役割を果たしていると予測された。このことを検証するためにRNAiの手法を用いて、ankletの発現抑制を試み、抑制によって足盤細胞の分化が遅れるとの予備的知見を得ていた。しかし、ヒドラ個体全体に対してエレクトロ・ポレーションによって、cDNAの全長に対応する2本鎖RNAを導入する手法において、その効果がどの程度であるのかを検証する必要が生じた。 そこで、今年度はヒドラに対するRNAiの手法の効率を詳細に検討した。その結果、ほぼ70%の被実験個体で有効に遺伝子発現を抑制できるが100%の効率ではないこと、また、導入した2本鎖RNAは永続的に遺伝子発現を抑制することはできずその効果はほぼ1週間程度であることが明らかになった。一方で、足盤細胞への分化の度合いについても、分化した細胞を特異的に認識するモノクロナル抗体を用いて分化した足盤の大きさを定量的に比較する方法を開発した。その結果、RNAiの手法の限界を考慮しても、やはりankletは足盤細胞の分化に関与していることが示唆された。 また、ankletのタンパクレベルでの機能解析のために、大腸菌における発現系を用いてタンパクの単離を試みたが系がうまく働かず、現在は、in vitroの発現系を用いてタンパクの単離を試みている。GST-anklet融合タンパクを、市販のin vitroの発現系を用いることによって特異的に発現させることができることまで明らかになったが、その後の単離精製過程の検討を現在行っているところである。
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