研究概要 |
ユーグレナ(Euglena gracilis)のプラスチド(葉緑体)形成過程で、光化学系IIに光を集めるLHCP II分子がゴルジ装置、ゴルジ小胞を経由して葉緑体へ輸送される経路に着目し、免疫電子顕微鏡法を用いて経時的に追跡した。脂質蓄積ユーグレナ細胞を暗所で無機培地に移し、1.5%炭酸ガスを通気すると脂質の減少にともなって、暗所で葉緑体の一部が発達する。暗所144時間後の細胞に9,000ルックスの光を照射し、0時間から48時間まで経時的に採取し、包埋の後、連続超薄切片法を用いてゴルジ小胞の動態を電顕で観察した。その結果、2タイプのゴルジ小胞が確認され、葉緑体包膜と融合することが分かった。ゴニオメーターを使用し、融合部位を観察すると、ゴルジ装置由来の小胞が最初に3層構造の葉緑体包膜の最外膜と中間膜とに融合する像がみられた。また、動物細胞などで報告されているmultivesicular body様の構造が葉緑体包膜に融合している像が得られた。さらに、ゴルジ装置由来の2タイプの小胞がミトコンドリア外膜と融合している像も観察された。すなわち、細胞核支配のミトコンドリアのタンパク質の一部もゴルジ装置を経由する可能性が示唆された。同時に、LHCPH分子を免疫電顕法で経時的に追跡すると、ゴルジ装置のトランス面からゴルジ小胞によって、葉緑体に輸送されていることが明かになった。先の生化学的成果と上述の免疫電顕観察による形態学的結果から、LHCPH前駆体タンパク質がゴルジ装置を経由し、ゴルジ小胞から葉緑体へ輸送されることが確かなものになった。
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