昆虫体腔内にカビや細菌などの微生物が侵入した場合に活性化するフェノール酸化酵素前駆体活性化系(proPOカスケード)の全容解明を目的に、現在未同定のFactor HとFactor Qと名付けた因子の精製を試みた。これまでの研究成果により、Factor H及びFactor Qは何れもプロテアーゼであり、普段は不活性な前駆体として存在すると考えている。そのため、これらを活性化する方法とその活性を検出する方法を確立しなければならなかった。Factor Hに関してはその上流のカスケード構成因子である異物認識螢白質と下流のセリンプロテアーゼ前駆体(Factor S及びproBAEEase)を用いた甫構成系を構築し、Factor Hの活性化の有無やある程度の定量的な活性値がわかるようになった。このFactor H検出系を用いて、proPOカスケード構成因子を含むカイコ体液を出発材料に硫安分画、陰イオン交換カラム、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーでFactor H粗精製標品を得た。Factor Hの分子量は約80kDaで、Factor S前駆体を限定加水分解することによって活性化させることが明らかになった。Factor Qの検出係はproPOカスケード構成囚子の組み換え体を調製し、検討中である。また、セリンプロテアーゼが基質を加水分解する際の糖の影響をthrombinをモデルとして調べた結果、添加する糖の構造によってはプロテアーゼ活性を特異的に阻害する可能性があることが明らかになり、Factor Qの精製に応用する予定である。
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