研究概要 |
ザリガニは尾部への強い接触刺激に対し、LGを介した逃避行動を示すが、繰り返し刺激を与えると、馴化を起こして、LGは発火しなくなる。ザリガニは一旦馴化から回復するが、すぐにLGの興奮性が低下し、再抑圧がかかるようになる。この逃避行動の発現、及び、馴化成立・維持にはセロトニン・オクトパミンといった生体アミンが神経修飾作用を持っていることを主に電気生理学的・薬理学的手法を用い明らかにした。 1)セロトニン・オクトパミンを灌流しながら、繰り返し刺激を与えると、コントロールに比べ馴化が成立するのに統計学的に有意に多い刺激試行回数が必要であった。細胞内セカンドメッセンジャーであるサイクリックAMP,サイクリックGMPを同様に灌流したところ、サイクリックAMPのみがセロトニン・オクトパミン同様の馴化率の低下が観察された。 2)サイクリックAMPは細胞内でアデニル酸シクラーゼの触媒によってATPから合成される。そこでアデニル酸シクラーゼの阻害薬であるSQ22536を前もって灌流しておいた標本にセロトニン・オクトパミンを投入し、馴化曲線を描いたところ、オクトパミンの場合はSQ22536非存在下の場合と同様に馴化率はコントロールに比べ低下したのに対し、セロトニンの効果はSQ22536存在下で有意に弱くなり、ほぼコントロールと同様の馴化曲線を示した。 3)ザリガニは短い休息後、馴化からすばやく回復するが、そのまましばらく休息を続けると、LGの応答性が再抑圧される。刺激間隔が長いほど馴化に要する刺激回数は増加するが、より短い休息時間でLGは再抑圧する。 4)セロトニン・オクトパミンをLG近傍に微量圧力注入したところ、両者ともLGの馴化からの回復を早めた。一定間隔の休息後に刺激を与えたところ、セロトニンはほとんどコントロールと変わらなかったのに対し、オクトパミンは再抑圧成立時間を短縮させることがわかった。
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