研究概要 |
ウナギの延髄にあるGlossopharyngeal-vagal motor complex(GVC)は上部食道括約筋(Upper esophageal sphincter muscle ; UES)をコリナージックに支配している(Mukuda & Ando,2003;Kozaka & Ando,2003)。摘出したウナギのGVCは20-30Hzで自発的に発火しているが、アドレナリン(AD)・ノルアドレナリン(NA)・ドパミン(DA)をIontophoreticに投与すると発火は抑えられる。これらカテコールアミンの抑制効果は用量依存的であり、ADとNAの効果はα_2-adrenoceptor antagonistであるYohimbineで完全に抑えられる。これらの結果はGVCニューロンにカテコールアミンの受容体が存在し、カテコールアミナージッタな神経支配を受けていることを示唆する。またGVCにおけるカテコールアミンの反応性には部域差が見られ、尾側では30-40%のニューロンはどのカテコールアミンにも反応せず、DAのみに反応するニューロンは20%ある。中部から頭側部では90%以上のニューロンがADに反応し、DA特異的な反応はほとんどない(Mukuda, Ito & Ando,投稿中)。一方カテコールアミン合成酵素であるTyrosine hydroxylaseの抗体で染まる神経線維の一部はArea postrema(AP)とCommissural nucleus of Cajal(NCC)から来ている(Mukuda, Ito & Ando,投稿中)。APは脳室周囲器官で、血中のホルモンに反応すると考えられ(Mukuda et al.,投稿中)、NCCには魚類の内臓からの感覚神経が投射しており、APとNCCの間に神経連絡が報告されているので、AP-NCC-GVCのシステムがGVCの発火パターンを決め、それによってUESの弛緩(飲水)が制御されていると思われる。GVCの発火パターンは迷走神経のX5分枝(迷走神経は10本の分枝として延髄から出るがその内の5番目)を通ってUESに伝えられる。X5分枝がUESを一番強く収縮させる至適周波数は20Hzである(Ogawa & Ando,準備中)。
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