研究概要 |
<組織学的研究の成果> ウシガエルの定位行動に関係する出力経路の中継点である腹側被蓋のnMLF, AD核領域へNeurobiotinを注入し、視蓋細胞の逆行性標識を行い、標識された細胞の長径を測定した結果、それらはA, B二つのタイプに分類できることがわかった。逆行性標識された細胞体には、クラスターを形成するもの、クラスターを形成せず、単独で存在するものがあり、ともにある一定の間隔をあけて分布していた。以上の結果から、同じ視野の領域でも、その中に数個の異なる出力解像度を持つ機能単位が存在していることから、カエルは位置、大きさ、動きの方向、速さなどの餌に対する様々な情報を、これらの異なる出力解像度を持つ機能単位を領域毎にうまく組み合わせて処理することで、適切に捕食行動を行っている可能性が示唆された。また、それらの中には、行動学的研究で明らかとなった、段階的速度上昇を起こす角度に相当する間隔を持って分布する大きな神経細胞が含まれており、これらが、速度調節に関与する可能性が示された。 <行動学的研究の成果> カエルの餌定位行動の角速度を測定した結果、定位角度の増加に伴って、定位速度を段階的に増大させていることがわかった。また、定位誤差のピークが段階的な速度上昇を引き起こす角度と一致していることから、速度増大による誤差補償のメカニズムが推定される。 定位前の移動距離の大きなコオロギに対しては、カエルはいくつかのあらかじめ決められた角度のターンをすることが示された。これらの値もまた段階的速度上昇を引き起こす角度に一致していた。この戦略は、定位困難な標的に対してエネルギーの節約を可能にしていると考えられる。
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