研究課題
沖縄県瀬底島の珊瑚礁地に棲息するカンモンハタを用いて、本種の月周期に伴う生殖腺発達の変化と産卵関連行動を明らかすることを目的に本研究を実施した。昨年われわれは、本種が満月に向けて生殖腺を発達させ、満月直後の大潮から中潮にかけ生息地の珊瑚礁地から礁地外へ移動して産卵することを明らかにした。本年度は瀬底島周辺において捕獲したカンモンハタを人口水槽に移し、産卵に向けた生殖腺の発達変化を詳細に観察するとともに、人工飼育下でも天然海域と同様に満月後の大潮から中潮にかけて産卵するのか、また、その産卵形式はいかなるものかを観察した。その結果、人工環境下においても本種は満月から約5日後に産卵を開始し、それは3日から4日続くことと、一個体の産卵は三日に渡ることが解った。一方、天然海域におけるカンモンハタの産卵関連行動をバイオテレメトリーを用いて調べたところ、満月から3日目を中心に珊瑚礁地から礁地外へ移動し、少なくとも沖合50メートル以遠まで移動して産卵することが解った。しかし、その詳細な産卵場所の同定には至らなかった。バイオテレメトリーの発信記録から判断して、産卵期間は水槽内で産卵が確認された時期と一致した。また、カンモンハタは産卵を終えると移動前と同じ珊瑚礁地に回帰することも明らかとなった。上述したように本種の生殖腺発達及びその産卵は月周リズムを持っており、それは人工環境下でも再現されることが解った。そこで、約1ヶ月にわたり、月光を遮断し飼育したところ、そのリズムは遮断によって阻害されることはなかった。したがって、この月周リズムは長期的な月光変動の影響をうけ、生体内に記録されているものと思われる。この機構解明は今後の課題として残された。
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Cell Tissue Research in press
Fisheries Science 70
ページ: 910-923