種数で最大の動物門である節足動物の基本体制等の理解および系統進化の再構築は、大変興味深いテーマである。「多足類」は、節足動物の祖先的体制をとどめる一方で、その系統進化の議論において最も解釈の分かれるグループであることから、多足類の基本体制等および発生過程を理解することは、節足動物の基本体制等および系統進化の考察を行ううえで重要である。本研究では、最も祖先的な多足類である唇脚綱に属する、セスジアカムカデ(オオムカデ目、メナシムカデ科)の胚発生を9ステージに、3齢幼虫までの後胚発生を5ステージに分け、その発生過程を詳細に記載・検討した。そして、節足動物の基本体制等および系統進化の考察において、特筆すべき知見を得、議論を展開した。 これにより、唇脚綱が多くの点で鋏角類と発生学的プランを共有することを示し、形態学的に初めてその類縁を示唆するデータを得た。また、節足動物のベーサル・クレードとしての唇脚類の位置づけを明らかにし、これを基に節足動物の体制のグラウンドプランを考察した。この内容はいくつかの原著論文としてすでに公表し、また、総括として現在Journal of Morphologyに投稿準備中。本研究の一環として、多足類の姉妹群と目されてきた六脚類に関してもいくつかの比較発生学的研究を行ない、これらについても原著論文を公表し、またガロアムシ目の発生学を同じくJournal of Morphologyに投稿中である。
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