研究課題
基盤研究(C)
本研究で大きな成果を挙げることができた後鰓類は、海藻を食べることに特化した嚢舌目に関するものであった。調査は、沖縄と相模湾を中心に行った。ともに嚢舌類の多様性の高い海域であり、とくに、この類の主たる餌である緑藻の多様性の高い沖縄では、嚢舌類の多様性も餌利用の多様性も極めて高いことがわかった。本研究の成果の主要なものは、1)約20種の日本未記録の嚢舌類を発見した。この中には未記載種が少なからず含まれており、現在、記載作業を進めている。2)普通種については餌海藻の詳細な調査を行うことができた。その結果、ハネモ、ミル類を食べる「ミドリアマモウミウシ」の隠蔽種2種を発見した。2種はそれぞれ、ハネモ、ミルのいずれかに餌が特化していることもわかった。3)この他にも、アリモウミウシ属に隠蔽種群と思われるものが見つかり、現在、それらについて種の検討を行っている。4)一方、これまで歯舌形態の差異に基づいて別種と考えられていた2種が同種である可能性が高いことをつきとめ、歯舌形態が餌などによって変異する場合があることを示した。5)これまで餌海藻が不明であった嚢舌類のいくつかについて餌を明らかにできた。6)また、多数個体を採集できた種については、野外での海藻利用状況を調査するとともに餌海藻選択実験等を行って、餌利用の詳細を明らかにすることができた。その結果、これまで考えられていたよりも幅広い分類群の海藻を食べるものがいる一方で、一部の分類群には特殊化がより進んでいると思われる例が見出された。7)さらに、これまでの日本産嚢舌類に関する研究論文を通覧することによって、嚢舌類の多様性研究の問題点を整理することもできた。このように、本研究によって得られた成果は多岐に渡り、嚢舌類のみならず、後鯉類全体の多様性研究にいくつかの新しい方向を示すことができた。
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