珪藻の殻形成過程に現れる動的な形態と珪化に関わる分子による系統学的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15570075
• 研究機関: 東京学芸大学
• 研究代表者: 真山 茂樹 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40199914)
• 研究分担者: 南雲 保 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (70120706) ; 岡野 桂樹 秋田県立大学, 生物資源学部, 助教授 (40147070)
• キーワード: 珪藻 / 被殻 / 殻形態形成 / Cylindrotheca / 新種 / シラフィン / sil1 / 分子系統

研究概要

Sil1が被殻の形態形成にどのように関わり合いを持つかを調べるためCylindrotheca3種(C.fusifolmis, C.closterium, C.nannoporosa sp.nov.)、Nitzchia paleaおよびEunotia tropicaの微細構造を詳細に観察した。Cylindrotheca3種は属を決定する形質は共有するものの、3種の殻面の基本構造は全く異なるものであった。しかし、これらの18SrDNAに基づく系統樹は、3種の単系統性を示し、形態に基づく本属の妥当性を支持する結果となった。5種からネステッドPCRによるダイレクトシーケンシングをおこない、sil1-like DNA配列(701塩基)を得ることができた。これらの配列は計5カ所で塩基置換が起こっているのみで、たいへん保存性の高いものであった。また、Cylindrotheca3種内の比較では、塩基置換は0または1であった。また、系統的にもっとも遠いEunotiaとでさえ、最大4塩基の置換であった。これらの種の塩基置換を18SrDNAにおけるものと比較すると、置換の数はオーダーが異なっていたが、その割合は類似するものであった。これらのことより、Sil1は珪藻殻面の形態形成の違いには大きく関わっていないことが示唆され、種によって異なる殻面の形態は他の形成機構によるものと思われた。

研究成果

• [文献書誌] Mayama, S.: "Observations of two new species of Navicula : N.exiloides and N.delicatilineolata."Diatom. 19・1. 17-22 (2003)
• [文献書誌] Mayama, S., Mayama, N.Shihira-Ishikawa, I.: "Characterization of linear-oblong pyrenoids with cp-DNA along their aides in Nitzschia sigmoidea (Bacillariophyceae)."Phycological Research. 25・2(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Takahashi, O., Mayama, S., Matsuoka, A.: "Host-symbiont associations of polycystine Radiolaria epifluorescence microscopic observation of living Radiolaria."Marin Micropaleontology. 49. 187-194 (2003)
• [文献書誌] Nagumo, T.: "Taxonomic studies of the subgenus Amphora Cleve of the genus Amphora (Bacillariophyceae) in Japan."Bibliotheca Diatomologica. 49. 1-65 (2003)
• [文献書誌] Toyoda, K., Nagumo, T., Osada, K., Tanaka, J.: "Morphological investigations of Achnanthes javanica Grunow and A.subconstricta (Meister) comb.nov."Diatom Research. 18・2. 365-375 (2003)