研究概要 |
日本の白亜紀において,bulk sieving法による古植物学的研究が双葉層群(白亜紀,前期コニアシアン)で行われた。その結果,北アメリカ,ヨーロッパ,中央アジアから報告された植物化石群に匹敵する保存性の良好な植物化石(Mesofossils)を,東アジアから初めて発見された。これらの化石植物群は,上北迫植物化石群を命名した。 上北迫化石植物群が発見された芦沢層についての研究とともに,サントニアン期にあたる玉山層からの植物化石の発掘に取り組んだ。その結果,表面に特徴的な掌状パターンをもつ種子化石の発見に成功した。この種子化石は,現生植物のシキミ科やスイレン科との関連がある可能性があるが,珠孔の構造は現生のどの分類群とも一致していないという特徴をもっている。現生のスイレン科の種子に比べると,直径が1mm前後と極めて小さい種子化石である。現在,海外研究協力者であるCrane氏やFriis氏と詳しい形態学的検討を重ねているところであり,現生植物の種子やこれまで発見されている新生代の種子化石との比較を行い,白亜紀における被子植物始原群の新たな種子化石として報告した。 さらに,これまでの成果をまとめた著書「被子植物の起源と初期進化」(北海道大学出版会)を出版した。 また,これらの植物化石の内部構造を解明するために,マイクロCTによる解析を試みた。その結果,この方法は植物化石を非破壊に構造を解明でき,植物心進化系統の研究に極めて有効な手段であることを明らかにした。マイクロCTによる研究を引き続き行っている。
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