毛顎動物であるヤムシの系統的位置については古くから議論が多い。分子系統学的な見地から、後口動物の一員ではなく、前口動物に近いことが指摘されている。ヤムシの初期発生を特徴づけるものとして、生殖質の存在がある。分子系統解析を行うための1つの候補遺伝子として、生殖系列で発現し、多くの動物種で調べられているvasa関連遺伝子の単離を進めてきた。昨年度はPL10関連遺伝子のホモログであるPgPL10を得て、ヒドラのものと近縁性が高いという結果を得た。本年度はvasa関連遺伝子の断片を得ることでき、全長を得ることにも成功した。PgVAS1と名付けたこの遺伝子について分子系統解析を行った結果、プラナリアのそれとクラスターを作った。このことは、ヤムシが左右相称動物の祖先的な動物に近い可能性を示すものである。また、PgVAS1は始原生殖細胞に発現することが明らかになった。これと並行して、形態形成に関わることが知られている遺伝子のホモログを単離し、ヤムシではいかに活用されているか調べようとした。まずカエデイソヤムシ胚およびカエデイソヤムシ幼体のcDNAライブラリーを作成し、これをもとに、背腹決定に関わる遺伝子として知られるdppおよびsogのホモログの単離を試みた。縮重プライマーを設計し、現在、単離中である。
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