研究概要 |
本年度はフタマタゴケ亜目の分子系統学的研究を重点的に推進し,同亜目内の4科(Aneuraceae, Metzgeriaceae, Mizutaniaceae, Vandiemeniaceae)の系統関係を明らかにした.試料収集はマレーシア(古木達郎)および日本(四国地方)(出口博則)で行った.葉状苔と茎葉苔の中間的な形態をもつという点からも苔類の分類体系を構築する上で重要な群である.研究の結果,rbcL遺伝子の塩基配列にもとついて系統樹を作成し,系統解析を行った(出口博則・坪田博美・古木達郎).得られた系統樹から,Mizutaniaceaeを除くMetzgeriineaeは単系統群であることが強く示唆された.Aneuraceaeは多系統群,Metzgeriaceaeは単系統群であることが示唆された.VandiemeniaはMetzgeriaceaeの姉妹群となった.この結果は,形態観察の結果からも支持された.このことから,VandiemeniaはMetzgeriaceaeの異名に落とすことが妥当であると示唆された.また,Metzgeriineaeに置かれてきたMizutaniaceaeはCalypogeiaceaeツキヌキゴケ科に近縁であることが明らかになり,MizutaniaceaeはMetzgeriineaeではなく,Jungermannialesウロコゴケ目に置くべきであるという結論を得た.本研究の過程で,DNA抽出法の簡便化を図り,成功した.形態学的研究としてシャクシゴケの胞子体の研究を行ない,系統を論じる根拠となる新形質を見出した(出口博則・山口富美夫).
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