研究課題
本研究は、様々な生殖的隔離・地理的隔離条件にあるテングショウジョウバエ亜群の種・亜種間について、ミトコンドリアDNAと複数の核遺伝子の系統関係を解析し、どの程度の生殖的隔離・地理的隔離条件でミトコンドリアDNAの異種間浸透が起こるのかをあきらかにすることを目的とする。異種間浸透は一般的に同所的に分布する種間で起こるため、地域集団によって異なる他種と同所的に分布するなど、多様な分布パターンを有する種(Drosophila kohkoa、D. plaua)に特に注目し、集団内多型も考慮した上で、ミトコンドリアDNAと核遺伝子の分子系統学的解析を行い、進化過程におけるmtDNAの異種間浸透を検証する。平成16年度は、複数配列の混和によって塩基配列決定が困難であったD. sulfurigasterのmtDNAについて、核ゲノムへの転移mtDNA配列の存在が原因であること、アルカリ精製法を用いてmtDNAみ単離することによって問題を解決できることを突き止めた。また、昨年度中に解析の目処が付いたwhite、Xdh遺伝子について、分子系統解析を行った。その結果、両核遺伝子の分子系統関係は、昨年度解析したmtDNAとは対照的に、種間の生殖的隔離の程度をよく反映し、地理的隔離の程度にはあまり影響を受けないことが分かった。一方、多数配列の分子系統解析の精度を向上させるため、新たに一括距離行列推定法を開発した。その結果、近隣結合系統樹推定法の誤差を最高50%程度まで低下させることに成功した。特に本研究で扱うショウジョウバエのmtDNAの場合のようにトランジション・トランスバージョン比が高く、塩基組成が偏っている場合に有効であった。
すべて 2004
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Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 101
ページ: 11030-11035