研究概要 |
ゼンマイ科の多様性の解析のために、(1)系統解析に基づいて分類体系を確立し、(2)種属誌のとりまとめを行い、(3)種分化の過程を解析した。 (1)分類体系の改訂については、分子系統学や比較解剖学の研究成果に基づき、4属6亜属の体系に整理した。そのうち、ヤマドリゼンマイはオニゼンマイと合わせてゼンマイ属の亜属に置かれていたが、系統の孤立性が確認され、単型属として独立させることになった。そのため、残ったオニゼンマイのために、新亜属名が必要となり、ゼンマイ属オニゼンマイ亜属を単系の新亜属として記載した。 (2)ゼンマイ科は地球上に広く分布するが、資料標本と、特定の地域についてはフィールドワークを設定して解析し、全種について詳細にレビジョンを行った。その結果、全17種を、ヤマドリゼンマイ属1種、Todea族2種、Leptopteris属6種、ゼンマイ属ではオニゼンマイ亜属1種、ゼンマイ亜属3種、シロヤマゼンマイ亜属4種に分類した。科内の属、亜属への検索表、各属の種への検索表を準備し、すべての種について、形態形質だけでなく、染色体や二次代謝産物の資料など、既知の知見を総合的に集成したモノグラフを作成した。このモノグラフは地球植物誌の1冊に含まれる。 (3)種分化の解析には、雑種起源であると推定されるオオバヤシャゼンマイの種形成に焦点を当て,赤目四十八滝や保津峡などの材料を対象に、ゼンマイ-オオバヤシャゼンマイ-ヤシャゼンマイ複合体の種間関係を追跡した。形態形質と遺伝マーカーの相関の解析により、推走雑種オオバヤシャゼンマイにおける連鎖不均衡の実体を明らかにする研究を実施した。
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