研究概要 |
ミトコンドリアゲノム全長配列に基づくMiya et al. (2001,2003)の研究により,これまで形態に基づき曖昧に認識されてきた包括的な高次分類群(目より高次の階級を与えられていない分類群)の多くは,その単系統性を明瞭に否定され,新たな構成のもとに再定義された. 再定義された高次分類群の中でも最も大きな修正を迫られたのが本研究用対象となったスズキ類である.本年度の研究では以下の項目に的を絞って,戦略的に研究を進めてきた. 1)ベイズ法に基づく大規模データ行列解析の試み:これまでの手法(最大節約法や最尤法)では,対象分類群が50を超えると,探索すべき系統樹の数が天文学的数字となり,解析が実質上不可能になっていた.ところで,事後確率に基づくベイズ法の出現により,適切な進化モデルを用いた大規模データ行列の解析が可能になった.本年度は特注の並列コンピュータの導入により,超高速演算が可能なシステムの構築を行った.4台のノードをもつLinuxマシンにより,200種以上のミトコンドリアゲノムデータの解析が可能になった. 2)ミトコンドリア全長配列の決定:14,000種からなる0スズキ類の多様性を網羅するために,引き続き多数の種の配列を決定した.本年度だけで50種を超える新たな配列を決定し,スズキ類だけで計200種を超える規模のデータになった. 3)ミトゲノムデータの多重整列:条鰭類すべてを網羅する339種を選定し,ミトゲノムデータのデータの多重整列を行った.その結果,今後の大規模解析の基礎となるデータ行列が完成した.
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