分類学的解明が遅れている東アジア産の淡水生アナイボゴケ科地衣類のうち、Zahlbruckner(1940)に見られるようにこれまでの報告が集中している雲南省を調査対象地域に選定した。調査地の選定にあたっては、Zahlbruckner(1940)によるアナイボゴケ科(のうち淡水生と見られる種)の報告の基となったHandel-Mazettiによる採集地をリストアップし、このうち本年度内に実施可能な地点を絞りこんだ。この作業にあたっては、現地雲南省の研究者(中国科学院昆明植物研究所 隠花植物標本館 王立松氏)と協議の上、雲南省北部とした。主な調査地は以下のとおりである。 (1)雲南省内怒江流域北部(貢山周辺、六庫周辺) (2)雲南省北部山岳地帯(白馬雪山周辺、大雪山周辺、老君山) (3)雲南省昆明近郊(普渡河流域、石林周辺) 現地調査中においても、調査ルート・調査箇所の見直しを随時行った。現地調査においては、各調査地点で産地情報を記録のうえ、地点ごとに確認できるアナイボゴケ科等を採取した。試料は分割し中国科学院昆明植物研究所隠花植物標本館に納め、片割れについて輸入し、標本作製を行った。 収集した標本について、外部形態および内部形態について、精査を開始した。外部形態については、主として実体顕微鏡による観察をおこなった。内部形態については、標本の縦断切片を作製し、プレパラートにしたのち、光学顕微鏡による観察を行った。
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