研究概要 |
東アジアにおいて淡水生アナイボゴケ科とみられる種の記録が多い中国雲南省において、生育地調査を行い、収集した標本の分類学的検討を行った。その結果、カワイワタケ属Dermatocarponを1種、ミドリゴケ属Endocarponを1種、ミドリサネゴケ属Staurotheleを3種1、マルミゴケ属Thelidiumを4種、アナイボゴケ属13種を淡水生あるいは半淡水生種として認めた。葉状および鱗片状の属であるカワイワタケ属とミドリゴケ属は日本と全く同一種であったが、他の痂状属の種組成は、日本とは大きく異なった。ミドリサネゴケ属では1新種(Staurothele honghensis H.Harada & Li S.Wang)、マルミゴケ属では3新種:(Thelidium luchunense H.Harada & Li S.Wang, T.sinense H.Harada &Li S.Wang, T.yunnanum H.Harada & Li S.Wang)を記載した。アナイボゴケ属では7新種(疑問種を含む)が認められた。また、台湾から記載されていたミドリサネゴケ属の一種Staurothele fauriei de Lesd.について、台湾北部の基準産地周辺における現地調査を行った。その結果、淡水生ミドリサネゴケ属として1種を認めた。これは地衣体の色調等、多少の違いはあるが、日本から記載されたS.iwatsukii H.Haradaと同一種と結論付けた。いっぽうS.faurieiのタイプ標本が見つからないため、その実体はいまだ不明である。そこでS.iwatsukiiを、今回認められた淡水生種に対する学名としての使用を提案した。
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