種々のペプスタチン様アルデヒド型阻害剤やペプチド阻害剤の結合する本酵素との複合体の構造研究のために、パソコン上でのin silico実験系の構築し、最適化を試みた。実例として、既に構造解析を終えた酵素(BCAIIの変異体Q253C、HmCP、DyP、ミニシャペロニンGroELの変異体)を計算に用いた。(1)独自に構造決定したDyPを元に、一次配列の相同性を利用して、ホモロジーモデリングでその類似性の高い酵素TAPやPOPの立体構造を作成した。さらに、TAPとPOPの機能を、予測した立体構造に基づいて、DyPの機能との比較し、変異実験で確認された(投稿中)。(2)プロテインデータバンクに既に登録済みの座標で、BCAII Q253Cのループ部分の動的な挙動を見積り、AFMによる実験の結果と一致した(投稿中)。(3)得られたBCAII、HmCPやDyPの分子構造に、それぞれ眼圧降下剤、抗結核剤、種々のアントラキノン基質を、ドッキング・シミュレーション(構造決定した酵素の主鎖部分は剛体で、その側鎖部分と基質は柔軟性を考慮した分子力場法)で計算し、さらに分子軌道法で基質-酵素相互作用を高精度に見積った。結合部位を予測し、基質や阻害剤の結合親和性を定量化した(投稿中)。(4)GroELの変異体をX線解析し、その結果から分子軌道法により複合体の生成熱を算出し、基質ペプチドやタンパク質との差分から、その相互作用エネルギーを見積る解析系を構築した(投稿中)。(5)自動分注器の分注機械精度を活用し、DyPの沈殿曲線を作成し、結晶の核形成領域と準安定領域を実験的に決定し、新規の結晶化条件を得た(投稿中)。(6)実験計画法に基づいた"不完備要因実験"により、効果的な条件検索法を検討し、結晶の厚みという実験データを応答曲面解析という多変量解析によって、沈澱剤濃度等の条件を最適化した(投稿中)。(7)X線解析から得られた酵素表面の荷電性アミノ酸残基が高磁場による結晶の良質化へ関与を、その側鎖のコンホメーション解析により機構とともに提案した。(8)高分解能の構造情報が得られない場合、その分子間相互作用の原理や機能解析でき、高活性の変異体や薬剤の設計できる方法の構築を目指す。
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