研究課題
本年度は、前年度からの継続研究として、特に食用菌類、シイタケ、ブナシメジ、エノキタケ、エリンギ、マイタケ、オオヒラタケ、マッシュルームにおける、(1)新規イノシトールリン酸含有糖脂質(マイコグリコリピド)の探索とそれらの構造解析、(2)TLC-免疫染色法による血液型活性の存否の確認を行った。研究実績の概要は、次の通りである。種々のマイコグリコリピドは、極めて共通性の高い基本構造(Manα1-2Ins1-P-Cer)に、更に糖鎖が延長して生まれてくるが、その糖鎖の延長、即ち、糖鎖の結合型は、(1)Gal(Fuc)型、(2)Gal(Fuc)/Man混合型及び(3)Man型の3種類に分類されることを明らかにした。(1)Gal(Fuc)型は、基本構造にガラクトース及びフコースから構成されているグループで、ブナシメジ、エリンギ、オオヒラタケが分類される。また、ブナシメジの糖鎖の非還元末端構造に注目すると、Fucα1-2Galはヒト血液型のO型抗原構造を有し、Galα1-3(Fucα1-2)GalはB型抗原構造を有している。前者のマイコグリコリピドは、O型糖鎖を認識するレクチンにより検出され、後者のそれは血液型判定抗血清及び抗体あるいはA型の血液型血清中に含まれる抗B抗体により認識された。一方、エリンギとオオヒラタケについても、非還元末端糖鎖にB型抗原構造を有していた。(2)Gal(Fuc)/Man混合型は、エノキタケとシイタケに見られ、基本構造にガラクトースとフコース、更に、非還元末端にマンノースが結合した糖鎖構造が特徴的である。特に、エノキタケのマイコグリコリピドは、構造的には新規なものではないが、付加価値のある物質(O型抗原)を大量に得ることができると言う点では、特筆できる。また、エノキタケのマイコグリコリピドの構成脂肪酸分析において、極めて興味深い結果を得ている。即ち、エノキタケを除いては、調べた菌類の主要な脂肪酸は、飽和酸(炭素数24の飽和の2-ヒドロキシ酸)であったが、エノキタケは、不飽和酸(炭素数24の不飽和の2-ヒドロキシ酸)であり、大きな差異が認められた。構成脂肪酸が飽和酸と不飽和酸では、マイコグリコリピドの物理的な性状に著しい違いの生じることが予測されることから、それらの差異に由来するところの生理活性評価に期待が持たれる。(3)Man型は、我々が調べたところの菌類には、今のところ検出していないが、ドイツのグループがアンズタケに見出しているもので、ガラクトースもフコースも含有しない、マンノースのみから成るものである。
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Trends in Glycoscience and Glycotechnology Vol.17 No.93
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Journal of Biological Chemistry Vol.279 No.2
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滋賀大学教育学部紀要 自然科学 No.54
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