核酸アプタマーとは、特異な高次構造をもつRNAやDNAオリゴマーのことであり、様々な機能を持つことが知られている。この核酸アプタマーの代表的な構造モチーフにテロメアDNAオリゴマーが形成する四重鎖構造がある。そのテロメアDNAオリゴマーが形成する四重鎖は、グアノシン(G)またはシチジン(C)残基に富んでおり、それぞれ、Gカルテット、i-motifと呼ばれる。本研究の目的は、このGカルテットやi-motifの構造と安定性を評価し、四重鎖を構造モチーフとする核酸アプタマーの分子設計指針を確立することである。本年度に得られた知見は以下の通りである。テロメアーゼの標的配列であり、核酸アプタマーのリード配列であるd(TGGGGT)nを合成・精製し、平行型Gカルテットの構造とその安定性がアルカリ金属イオンにより変化することについて核磁気共鳴分光法を用いて詳細に研究をおこなった。その結果、従来とは異なるGカルテット構造が形成することを見出し、Gカルテット構造の多形性に関する重要な知見が得られた。また、核酸アプタマーへホスホロチオエート基を導入する研究をおこなった。HIVウィルスの増殖を抑制することが知られているCの連続した配列が形成するi-motif構造へホスホロチオエート基を導入し、核磁気共鳴法で構造解析した結果、i-motifを形成するC残基の糖のコンフォメーションがall-Sp体の糖のコンフォメーションがC3'-endoから変化していることを見出し、Cアプタマーの構造と安定性の相関が得られた。
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