研究概要 |
細胞内小器官ペルオキシソーム(peroxisome)は多くの重要な代謝機能を有し、その障害は遺伝性の致死的疾患をもたらす。この遺伝性難病はZellweger症候群に代表されるペルオキシソーム欠損症として知られ、その中でもA群(米国8群)は、最後まで病因遺伝子が不明の相補性群であった。 本課題研究では、A群の相補遺伝子を単離し、ペルオキシソーム欠損症におけるすべての一次的病因(遺伝子)を解明した。A群に属する変異CHO細胞(ZP167)を用いて機能相補スクリーニングを行った結果、ペルオキシソーム形成能を回復させるヒトcDNAの単離に成功した。このcDNAがコードするタンパク質はこれまでに報告されているすべてのペルオキシンとも顕著な相同性が認められないことから新規ペルオキシンPex26pと名づけた。Pex26pはPex6pを介してPex1pと複合体を形成し、Pex6pおよびPex1pの細胞内局在やこれらの機能に密接な相関を持つことを明らかにした[Nat.Cell Biol.5,454-460.(2003)]。また、ヒト欠損症患者におけるPEX26変異と機能障害の相関について分子レベルで研究を行った。A群患者由来の線維芽細胞を用いて、病因となる遺伝子変異を系統的に解析し、PEX26の温度感受性変異と臨床病型との相関について興味深い知見を得た[Am.J.Hum.Genet.73,233-246.(2003)]。さらに、Pex26pはPex1pやPex6pをリクルートしてくる足場としてだけでなく、これらが標的とする基質タンパク質の選別に重要な役割を果たすことを示唆する知見を得た(投稿準備中)。こうしてPex1pやPex6pの細胞内における局在や、Pex26pをも含めたホモまたはヘテロ複合体の構造を明らかにし、ペルオキシソーム生合成における役割とその障害について考察した(投稿中)。
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