研究概要 |
植物においては光、塩など様々なストレス因子がシグナルとなり細胞内のカルシウム濃度が上昇する。カルシウムセンサー蛋白質は細胞内のカルシウム濃度の上昇に伴い活性化されシグナルを下流へと伝える。最近CBLという新規な蛋白質が同定され、引き続きCBLの標的蛋白質としてCIPKが同定された。CBL/CIPK経路は塩ストレスなどで深く関与していることが示されており、生理学的な重要性も次々と解明されてきている。一方この経路は高等植物にも広く分布していること、さらにはゲノム研究からCBL, CIPKともに複数存在していることが判明している。これらのことからCBL/CIPK経路の重要性と広範な働きが予想できる。この経路の構造生物学的解明はCBLのカルシウムによる活性化機構、CIPKの認識機構などCBL/CIPK経路の構造的基盤を与えるものと考えられる。 前年度にCBLファミリーの一つCBL2の構造解析に初めて成功しその構造的特徴を明らかにした。今年度はCIPKの認識機構を明らかにするためCBL結合ドメインであるNAFドメイン並びにNAFドメインに含まれるペプチドとの共結晶化を目指した。ペプチドは21アミノ酸および24アミノ酸のものを外注し調整した。一方NAFドメインは数ステップの精製段階を経て十分な精製度の蛋白質を得ることができた。精製したCBL2とNAFドメインを混合しゲルろ過クロマトグラフィーにより複合体を分取した。現在までにNAFペプチドとの共結晶化において結晶が得られている。しかし構造解析するには不十分なのでさらなる条件検討を行っている。
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