研究概要 |
植物においては光、塩など様々なストレス因子がシグナルとなり細胞内のカルシウム濃度が上昇する。カルシウムセンサー蛋白質は細胞内のカルシウム濃度の上昇に伴い活性化されシグナルを下流へと伝える。最近CBLという新規な蛋白質が同定され、引き続きCBLの標的蛋白質としてCIPKが同定された。CBL/CIPK経路は塩ストレスなどで深く関与していることが示されており、生理学的な重要性も次々と解明されてきている。一方この経路は高等植物にも広く分布していること、さらにはゲノム研究からCBL,CIPKともに複数存在していることが判明している。これらのことからCBL/CIPK経路の重要性と広範な働きが予想できる。この経路の構造生物学的解明はCBLのカルシウムによる活性化機構、CIPKの認識機構などCBL/CIPK経路の構造的基盤を与えるものと考えられる。 シロイヌナズナには10種類のCBLファミリーがあるがCBL2を選び、サンプル調整を行い結晶化に十分量のタンパク質を得、タンパク質の結晶を得ることに成功した。最終的にはモデルの信頼性を示すR因子が20.4%、フリーR因子が24.8%という信頼度の高いモデルを得ることに成功した。 カルシウム結合型CBL2はαヘリックスリッチな構造をとっており、分子内に擬似的な二回軸をもっていた。CBLの構造よりCIPKの活性化モデルを提唱した。CBL2は4個のEFハンドモチーフ(EF-1〜EF-4)を持つが、カルシウムの電子密度が確認されたのは、EF-1とEF-4の2箇所であった。EF-2及びEF-3ではカルシウムは同定できなかったが、内部の密な水素結合のネットワークによって安定化されており、open conformatioをとっていることが示された。本研究はCBLファミリーに属するタンパク質の最初の結晶構造解析である。またCIPK14の複合体構造をめざしサンプル調整を行った。
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