研究概要 |
1996年に初めてUDP-GlcNAc,CMP-Sia,UDP-Galに対する糖ヌクレオチド輸送体の遺伝子が相次いで同定され、その後、いくつかの輸送体遺伝子が確認されることによって、糖ヌクレオチド輸送体は遺伝子ファミリーを形成することが示唆されていた。その一方で、ゲノムプロジェクトの進展によって、多くの膜介在性タンパク質をコードすると推定される機能不明の輸送体遺伝子がデータベース上に現れるようになっていた。これらのうち、ATP非共役型の輸送体は、HUGO Gene Nomenclature Committeeにより、SLC(solute carrier)として41のファミリーに分類されている。糖ヌクレオチド輸送体遺伝子ファミリーはそのうちのひとつのSLC35遺伝子ファミリーとされた。これまでは、糖ヌクレオチド輸送体であることが明らかであったCMP-Sia,UDP-Gal,UDP-GlcNAc輸送体のヒトおよびマウスの遺伝子のみにSLC35A1,A2,A3の遺伝子シンボルがそれぞれ付与されているのみだったが、本年度、オーファン輸送体遺伝子を含めて可能な限り、同じファミリーに属する遺伝子を探索し遺伝子シンボルを付与しようという動きがあった。そこで、SLC35A1,A2,A3以外で既に糖ヌクレオチド輸送体としての機能が明らかになっている遺伝子、および解析中の輸送体遺伝子からのアミノ酸配列を利用してデータベースのスクリーニングを行い、相同性を示すヒト遺伝子を拾い上げた。その結果、全体としては緩やかな相同性を示す17遺伝子が見出された。これらは、それぞれ5つの比較的高い相同性を示す群に分かれたため、SLC35ファミリーを、さらにAからEまでのサブファミリーに分けたうえでそれぞれの遺伝子のシンボルを提案した。その後、Eサブファミリーにさらに1遺伝子、新たな5遺伝子からなるFサブファミリーが見出され、現在、ヒトのSLC35ファミリーは6サブファミリー23遺伝子となっている。 一方、我々は、hUGTrel8と命名した、ショウジョウバエの個体発生に関与している輸送体fringe connection、および線虫の産卵口の形態形成に関与するSQV-7輸送体と高い相同性を示す輸送体遺伝子を見出していた。その相同性から、重要な生理的役割を果たしていることが示唆されたため、UGTrel8を培養細胞、及び酵母での発現を行い輸送活性等の解析を進めた。
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